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2012-05-31

初夏

うつむく青年
 うつむいて
 うつむくことで
 君は私に問いかける
 私が何に命を賭けているかを
 よれよれのレインコートと
 ポケットからはみ出したカレーパンと
 まっすぐな矢のような魂と
 それしか持っていない者の烈しさで
 それしか持とうとしない者の気軽さで
 
 うつむいて
 うつむくことで
 君は自分を主張する
 君が何に命を賭けているかを
 そる必要もないまばらな無精ひげと
 子どものように細く汚れた首すじと
 鉛よりも重い現在と
 そんな形に自分で自分を追いつめて
 そんな夢に自分で自分を組織して
 うつむけば
 うつむくことで
 君は私に否という
 否という君の言葉は聞こえないが
 否という君の存在は私に見える
 うつむいて
 うつむくことで
 君は生へと一歩踏み出す
 初夏の陽はけやきの老樹に射していて
 初夏の陽は君の頬にも射していて
 君はそれには否とはいわない
             谷川俊太郎
5月が終わる。春から夏へ。季節は静かに、そして確実に変化していく。
私の大好きな初夏。詩のなかの”君”が私自身のことのように思えてくる。

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