いろんな人たち
Sviatoslav Richter(1915-1997)
グールドをして「最強の音楽伝道師」と言わしめたピアニスト、リヒテル。
グールドによれば、演奏家は2種類のカテゴリーに分類できるのだという。
第一は、楽器と奏者の関係を聴衆に見せようとするタイプ。パガニーニや
リストなど、”ヴィルトゥオーソ”がその典型的な例として挙げられている。
第二は、楽器演奏を見せるのではなく、音楽と奏者、ひいては音楽と聴衆
をダイレクトに結びつけてしまうタイプ。このカテゴリーに属する音楽家
で、リヒテルの右に出る人はいない。そうグールドは言う。
2006年の夏、友人Aが持ってきてくれたモスクワ音楽院ライブのDVDが
きっかけだった。どの曲もすごかったが、なんといっても度肝を抜かれた
のが、ベートーヴェンのソナタ第一番。折しも練習していた曲だったので
タイムリーで、彼の硬質な音は頑なな私の心にグサグサ突き刺さってきた。
特に4楽章は圧巻。信じられない程のスピードで突き進み、峻烈を極める。
左はシューベルトのソナタ集。最高傑作。大好きな18番が収録されている。
右はドキュメンタリー。リヒテルの人生と音楽が150分間に詰まっている。
私がシューベルトに開眼したのも、リヒテルの弾くソナタに依るところが
非常に大きかった。13番や18番、遺作の21番を聴いて何度涙したことか。
惜しむらくは、彼の演奏を生で聴けなかったことだ。残念でならない。
コメント7件
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中田麦さま
このfc2ブログは、ペンネームで書いていました。コスモス星の夢ということになっています。
松尾眞一郎
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コスモスの夢さま
すばらしいリヒテル体験ですね。生演奏で聴かれたなんて、羨ましすぎます。
僕はいつも彼のレコードを聴きながらライブではきっとこうだろう、と想像をたくましくして聴いています。
ブーニンは、リヒテルの演奏は生で聴かなければ絶対わからない、と言ったそうです。レコードはあくまで記録であり、実際の演奏とは全く別物なんでしょう。でも録音が無ければ彼の演奏を知ることは絶対にできなかったわけですから、やはりその技術に感謝しなければなりません。ドキュメンタリーDVD、おすすめです。冒頭のシューベルトのソナタで僕の身体は完全に音楽と同化してしまいました。
中田 麦
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麦さま
この体験は、差し上げることも出来ませんから、我が身の幸いといたします。ドキュメンタリーDVD、本日、四条通の十字屋で訪ねたら発売中止で在庫なしでした。どこかでなんとかしましょう。ご紹介、ありがとうございます。
夢
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夢さま
先日、梅田のタワーレコードでみかけました。ネットでも購入可能です。
よろしければ是非!
中田 麦
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麦さま
連絡が遅くなりましたが、DVDをネット上で探していたら、バッタリ、そのデータに出会いました。ダウンロードソフトをインストールしていて、うまく相性が良かったのでしょう。数時間を要しましたが、全編を取得出来ました。冒頭からもう、別世界に引き込まれる様で…ありがとうございます、貴重なご紹介を。
あ、新しい更新、武満徹の著書、私の数少ない蔵書の一冊です。画像が現れたとき、ドキッとしました。(微笑)
夢
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夢さま
映像、無事入手されたようで良かったです!
武満の著作はたくさんありますが、やはり僕は『音、沈黙…』が好きです。
麦
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私は、音楽をきちんと聴いたことが少ないが、リヒテルには、2度深い感銘を受けている。なんといっても日本で彼の生演奏を聴いた数少ない聴衆でもある。
1970年、EXPO’と呼ばれた万国博覧会に、飛行機嫌いの彼はシベリア鉄道を乗り継いで日本にやってきた伝説の機会だった。たぶんそれまで一度もレコードすら聴いたことはなかったと記憶するが、なぜか高額のチケットを手に入れて聴きに行った。その風貌に惹かれたのかもしれない。曲目は覚えていないが、その中の一曲で完全にやられた。ラフマニノフだったと思う。少し離れた席だったが、途中から体が震えた。なぜ?なぜ?広いホール(フェスティバルホール)のたった1点を占める楽器から発生した音が体の細胞を突き動かした。
それからも、あまりリヒテルを聴くことはなかった。
2度目は、それが誰の演奏か、曲名も知らずに出会った。まだステレオを持たない頃、ラジオのFM放送だった。ピアノのソロ演奏が流れてきて、不思議な体験をする。今まで音が入ったことない脳の領域に染み入っていったのだ。一音一音が、確実に。そこ(脳内のimage)には水の流れがそのまわりのspaceとともにあった。音が脳内を旅してゆく。その曲は、バッハ、平均律クラヴィア曲集第1巻、リヒテルの演奏だった。これを機会に初めて全集を買い、ヘッドフォンを買い、コンポーネントを電器屋に求めることとなった。小さなアンプYAMAHA、小さなスピーカーVICTOR,今でも使っている。
何年か経って、身近な人が突然の病魔で倒れ、脳水の話を聞いたとき、ああ、ここに音が染み入っていたんだ!!とはっきり分かった。imageの確かさをこうやって知ることとなった。
長くとりとめのない文を書きました。リヒテルの姿を見て思わず書いてしまいました。ご笑読ください。夢