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2012-04-14

今日の言葉

今日は所用で京都へ。まず向かった先は京都芸大。一応、4年間通った大学だ。
が、いつ行ってもあそこの雰囲気は独特で苦手だ。だから用事を済ませるとす
ぐに出てきた。そのあとは市内でいろんな人と会った。みうらじゅんの言葉を
借りて言えば、”面接プレイ”を行った。新しいものに出会うきっかけは、いつ
だって誰かを通じてだ。おかげで今日は新鮮な世界に触れることができた。
学生時代、まわりに馴染めなかった最大の理由は、大学という、この”面接プ
レイ”が頻繁に行われる環境にとても付いていけなかったからだと思う。なに
しろほぼ毎日が面接オンパレード状態だったから、内気な私には荷が重すぎた。
そんな苦い思い出がつまった土地を久々に歩いてみると、当時のことがいろい
ろ想い起こされた。前置きが長くなったが、今日はその話。
大学3年の夏のある日、芸大近くの信号で待っていると、よれよれの白Tシャ
ツに短パン、ビーサンというずいぶんラフな出で立ちの50がらみのおっさん
が急に近づいてきた。そしてこう言った。
「われ、何メンチ切っとんねん」
「えっ?いや、別にそんなことは……」
「なんやと!?」
「あ、すみません。本当にごめんなさい」
確かにあのとき、おっさんの手にぶら下がったビニール袋のなかのナタデココ
ヨーグルトが気になって、ついじっと見てしまったのは事実だ。でもだからと
いってメンチを切ったつもりはなかった。だいたい、人にメンチを切ろうとし
たことなんて一度もない。それともよっぽど自分の人相が悪かったのか。いや、
それはないはず…だ。彼はその後もごちゃごちゃといろいろ難癖をつけてきた。
だがしかし、見ず知らずのこのおっさんは一番最後に思わぬ言葉を吐き捨てた。
「覚悟が足らん、覚悟が」
「?……はぁ……??」
こんなことを人から言われたのはこれが初めてのことだった。何度もそう言い
ながら、結局おっさんは立ち去っていった。何だかよくわからない気持ちのま
ま、私はその場にとり残された。なぜ彼は突然そう言ったのか。当時の私をみ
て直感的にそう説教したくなったのだろうか。真意はわからないが、いま考え
てみれば彼の発言はあながち間違ってはいなかったのかもしれない。
そうだ。覚悟がなければこの道は前に進んでいけない。ありがとう、あのとき
のおっさん。いえ…おじさん。あのときのあなたの叱咤激励は、いまの私を形
作っているものの一つだと言っても過言ではありません。そう胸を張って言え
る日は、まだ遠い。でも、今日は大事なことを改めて思い直せた。

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