讃歌
好きな作曲家を讃えるシリーズ。
今日はこの人。
武満 徹(1930-1996)
「現代音楽なんてしょうもない」と思っていた。武満の映画音楽『黒い雨』
を中学3年で聴くまでは。それまで聴いた音楽のどれとも明らかに違った。
それは、どこかとても遠いところから流れてくるようだった。恐ろしいほ
ど深く、不気味な響き。ゾッとしたのを今でも鮮明に覚えている。
小学館から武満徹全集が刊行されたのはその後。実家は書店経営をしてい
るので、もちろん購入。高校3年間は武満全集を聴くことにかなりの時間
を費やした。おかげで暗い青春時代を過ごすはめになってしまった。
以下は特に好きな作品
・遮られない休息(1952/1959)
・地平線のドーリア(1966)
・ヴァレリア(1969)
『音、沈黙と測りあえるほどに』というエッセイのタイトル通り、この時
期の作品は沈黙と音がきしみあうような厳しい音楽が多い。だが70年代
に入ると、彼の作風はだんだんときれいで澄んだほうへと移行していった。
いわゆる「世界のタケミツ」と呼ばれるようになったのもこの頃からだ。
私は武満がタケミツになる前のほうが好きだ。
これは、告別式で黛敏郎が弔辞の最後に口ずさんだ武満のメロディー。黛
の映画の仕事を彼が手伝っていた時に書いたもの。黛はあまりにすばらし
いこのメロディーを映画に使うのは勿体ないと感じ、ずっと使わずにいた。
その後、谷川俊太郎が詩をつけ「MI・YO・TA」という美しい歌になった。
終わりに、飯田茂実の詩を引用しておこう。
歌
ある時は
歌が消え 歌人だけが生きていた
またある時は
歌人が死に 歌が残った
百億年後
歌人は消え 歌も消え
歌人に歌をうたわせた
もっとも深い原因だけが
残るのだ
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